篠笛 篠笛の選び方と使い分け 

篠笛の選び方と使い分け(1)   篠笛の選び方と使い分け(2)   篠笛演奏における移調   篠笛演奏での息コントロール   篠笛の上達方法

五線譜から篠笛譜(数字譜)起こしする方法

「篠笛でJ-POPの曲を演奏したいけど、篠笛譜が見つからないのですが」という問い合わせをする人が多くみられますが、残念ながら一般にはJ-POPの篠笛譜(数字譜)というものはほとんど流通していません。このため、篠笛を演奏する人のほとんどは、五線譜で書かれたメロディ譜やピアノ譜等を代用して演奏しているのが実態です。

しかし、ピアノ譜等の五線譜は、篠笛の最低音()より低い音域の音符が出てきたり、半音記号(♯,♭)の多いオリジナルの調号のまま書かれていたりして、フルートのような半音キーを有しない篠笛では、そのままでは演奏が困難な場合があります。
このような問題で困っている人のために、このページでは、篠笛の音域から外れたり半音記号が多い五線譜から、篠笛で演奏し易い数字譜(一、二、三…)に変換する方法について解説します。合わせて、これらの作業を自動で計算してくれるエクセル(篠笛の自動移調Excel)も紹介しています。

フルート等の西洋楽器経験者が篠笛を始める場合は、五線譜のまま読譜されるケースがほとんどだと思いますので、その場合の移調方法については↓のページをご参照ください。
【篠笛演奏における移調について】
  • 篠笛の基本運指
和楽器である篠笛では、一本調子~十二本調子のどの笛であっても、五線譜のハ長調/イ短調(半音記号がゼロ)の曲の場合は下の運指を共通的に適用します。ハ長調(イ短調)の曲の場合は、この対応図から五線譜の下に(一、二、三…)と数字譜を書き込んでいけば簡単に篠笛譜起こしすることができます。

篠笛運指表

半音も含めた詳細な運指表は↓のPDFファイルを開いてください。
       詳細篠笛(7孔)運指表

なお、上に示す五線譜は、一般的な実音楽器で用いられる絶対音高ではなく、篠笛等に用いる移調楽器用の相対音高譜になります。一部の教本では下の右図のようにアウトプット用の実音五線譜を基準に表記している場合がありますが、篠笛奏者が譜読みする際は全ての調子に左のインプット用五線譜だけを共通に用いればいいのです。

インプット・アウトプット

  • 祭囃子用オリジナル譜
数字譜は誰にでも分かりやすい便利な表記方法なのですが、音価(音の長さ)が不明確なためメロディーがイメージしにくいという欠点があります。このため、戦後の義務教育で音楽の授業を受けた最近の祭囃子(神楽、獅子舞等)の笛方は、下の例のように数字譜の上に音の長さを示す音符を組み合わせた和洋折衷のオリジナル篠笛譜を作っているパターンが多いようです。私の場合も地元の神楽笛を師匠から教えてもらった際、下のオリジナルの一線譜を作って習得した記憶があります。このような和洋折衷譜は我流に位置づけられるでしょうからオフィシャルな篠笛教本に書かれることはありませんが、メロディーがイメージしやすく、特に五線譜に乗らない古典調篠笛による祭囃子等の日本音階の記譜法としてお薦めです。
また、音符の覚え方は、「ド、ミ、ソ」のように必ず一音一文字読みとするのが鉄則です。数字譜の「一、三、六」を「いち、さん、ろく」などと音読みしてはいけません。この読み方では、一音二文字読みとなってしまいメロディーが崩れてしまいます。下の数字譜の一音一文字読みは私の師匠が使っていた訓読みによる方法ですが、特に決まりはないので自分の覚えやすい読み方を使えばいいと思います(私は「五」は紛らわしくないよう「ご」と読んでいます)。

一線譜

  • 移調の必要性
J-POPのピアノ譜等を用いる場合に問題となるのは、下図のように半音記号が多く付いた調号の楽譜に遭遇した場合です。これをそのまま数字譜に変換したのでは、(三メ、六メ、七メ…)のように半音(指穴半開)だらけになってしまい、フルートのような半音キーを有しない篠笛にとっては非常に演奏が難しくなります(数字譜の[メ]は半音低い[♭]と同じ意味です)。

篠笛半音


篠笛半音運指

例えば↓の「海の声」の楽譜では、オリジナルkeyがホ長調のため、半音記号(♯)が4つも登場し、指孔半開を多用しなければなりません。特に「二メ」の半開を押さえるのは難しく、できれば回避したい運指です。  

海の声


このため、篠笛ではできるだけ半音記号が少ない調(ハ長調、ヘ長調、ト長調等)に移調して演奏するのが一般的です。

篠笛移調

以下では、半音記号が多い調号の五線譜から、半音の少ない数字に変換する方法について説明します。 

  • 移動ド法
移調楽器である篠笛では、どの調子(一本調子~十二本調子)の笛であっても、下の図のように曲の調によって「ド」(篠笛の数字譜の「一」ポジション)の位置を移動して読む「移動ド」法を用いるのが基本です。 この場合、絶対音高でのドの位置が調子によって違ってきますが、篠笛演奏時(インプット用)には相対音高による移調譜を使用しますので、どの調子の笛も共通のドレミ位置として読む五線譜読みとなります。

篠笛移動ド

これにより、どの調の曲であっても、下の篠笛の指孔配置と同じ「全音、全音、半音、全音、全音、全音」の並びに合わせることができますので、半音記号の多い調号の曲であってもハ長調の基本運指でドレミが演奏可能となります。なお、カラオケマシーンでは任意のkeyに調整が可能ですので、どの調子の笛であっても合わせることが可能です (カラオケ伴奏のkeyの合わせ方)

篠笛指穴配列

通常、篠笛の数字譜あるいはカタカナの「ドレミ…」で譜読みをしている人なら、五線譜の下に、篠笛で演奏し易い調に移調した後の相対音高での「ドレミ…」又は「一、二、三…」を書き込んでいけば簡単に移調できます。最初から数字譜で覚えている人は、この方法で演奏している方が多いようです。

  • 五線譜から数字譜に自動で移調するExcel
次節から数字譜への移調方法を説明していきますが、いちいち音符の位置を数えながら手作業で数字譜を起こすのは非常に面倒な作業になります。このため、自動で五線譜から数字譜に移調するエクセルを作成しましたので一度使ってみてください。

「篠笛自動移調Excel」ファイルダウンロードは↓から(ブラウザによる表示では動作しません。一旦PCにダウンロードしてExcel機能を活かした状態で動作します)。

 
   Excelダウンロード 篠笛自動移調Excel(チェックボックス版)のダウンロード

動作が重い場合や、表計算ソフトの互換性等によりチェックボックス選択がうまく動作しない場合は、下の軽負荷(プルダウン選択)版をダウンロードしてみてください。
   Excelダウンロード 篠笛自動移調Excel(プルダウン選択版)のダウンロード

   篠笛自動Excelの使い方はこちら


  • ハ長調運指の数字譜起こしする方法
音楽の授業で習ったような記憶がある人もいらっしゃるかと思いますが、♯と♭それぞれの階名は調号の一番右の半音記号が五線譜上のどの高さに位置しているかで決まっているので、その高さを基準に数字譜を書き込んでいけばハ長調運指にすることができます。

篠笛ハ長調移調

上の法則に則って基準音を求めれば、その他の調号の音符についても数字譜起こしすることができますが、見やすいように各調の対応譜(移動ド)を以下に示しておきます。演奏したい曲の調号の対応譜を見ながら、五線譜の下に数字譜を書き込んでいけば、どの調の曲であってもハ長調(半音を用いない)運指に移調した演奏が可能となります。なお、[一]より低い音符がある場合や、全体的に甲音ぎみとなる場合などでは、1オクターブ上げ下げして演奏し易い音域で書き込んでいけばよいでしょう。

篠笛ハ長調移調1

篠笛ハ長調移調2

  • ヘ長調の数字譜起こしする方法
上のハ長調運指は、半音が登場しないため最も演奏し易いのですが、例えば前述の「海の声」を上のハ長調対応図を用いて移調すると、音域が大甲音まで至り、全体的に高音側に偏ってしまいます。かといって1オクターブ下げると、今度は後半部で篠笛の最低音より低い箇所が出てしまいます。このような場合は、以下で述べるへ長調(♭1つ)かト長調(♯1つ)に移調すると、演奏し易い音域に持ってくることができます。ハ長調にするか、又はヘ長調かト長調にするかは、まず曲全体を通した最低音と最高音の2音だけを移調してみて、最も演奏し易い音域となる調性を選択するようにします。 

海の声移調

以下では、比較的半音が出し易く、篠笛でよく使われるへ長調運指の基準音の求め方と対応譜(移動ド)を示します。例えば、上の「海の声」の例では、下の「ホ長調→ヘ長調」の対応譜をもとに五線譜の下に数字譜を書き込んでいます。
ちなみに、「海の声」をヘ長調(#4つ → ♭1つ)に移調した譜を用いて、西洋楽器の伴奏(カラオケ)で演奏したい場合は、このページ(篠笛演奏における移調について)にある適用調子表によれば、七本調子を用いることで音程を合わせられることが分かります。

へ長調は、シ♭(七メ)の半音が一つだけ登場しますが、左手人差し指ですので比較的優しい半音操作となりますし、「0」ポジションを用いることもできます。

篠笛へ長調移調



篠笛へ長調移調1

篠笛へ長調移調2

  • ト長調の数字譜起こしする方法
ほとんどの場合、ハ長調(半音記号ゼロ)かヘ長調ト(♭1つ)のどちらかで最適音域への移調はカバーできますが、ト長調とした方が最適音域になる場合の移動ド対応譜(移動ド)は以下となります。ここでは一例のみ載せていますが、一番右の♯の位置が五メ、又は一番右の♭の位置が一の運指になるかだけ知っておれば、どの調にも適用できます。

篠笛ト長調移調



篠笛ト長調移調1


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① 篠笛の選び方と使い分け【その1】
② 篠笛の選び方と使い分け【その2】
③ 篠笛演奏における移調について
⑤ 篠笛演奏における息コントロールと音質に関する考察
⑥ 篠笛の上達法
〇 篠笛の自動移調Excel

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